結論から言えば、アメリカ株式をアメリカ証券会社を通じて売却した場合、連邦所得税の源泉徴収は行われず二重課税が生じていないため、外国税額控除の対象にはなりません。
外国税額控除の対象になるものについて、所得税法は、「外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により個人の所得を課税標準として課される税」について外国税額控除の対象とできる旨を定めています。
このことを踏まえて、かみ砕いて言えば、「その税金が日本の所得税に相当する税であること」と「日本でも同じ所得について課税されること」という状況にあることが必要となります(所得税法第95条、所得税法施行令第221条)。
これを、ESPP購入のアメリカ株式売却の観点からもう少し詳しく見てみます。
たとえば日本の居住者がESPPによって購入したアメリカ本社の株式を売却するケースがあるとします。
アメリカの連邦所得税においては、その売却益に対してアメリカでは課税しない(居住地国課税という取決めがあるためです)ことから、アメリカの証券会社は、その売却益に対して連邦所得税の源泉徴収を行いません。
これを日本の居住者の所得税で考えると、居住者については国内国外を問わず全ての所得に対して課税されることから、アメリカ本社の株式に係る譲渡益に対しては日本で課税される対象となります(所得税法第5条、第7条)が、一つの所得に対して日本とアメリカの両方で課税される「二重課税」が生じているわけではありませんので、外国税額控除の対象とはなりません(所得税法第95条)。
ちなみに、日本における課税については、購入の際のディスカウント部分が給与所得として課税され、売却の際の値上がり部分が譲渡所得等として課税されるというのがよく見られるケースです。
ESPPの外国税額控除は、「海外で税金を払ったから自動的に日本で返ってくる」という制度ではありません。どの所得に対する税金なのか、どの国で課税されたのか、租税条約の適用はあるのかなどを確認した上で、控除対象となるかを判断する必要があります。
特にESPPは給与課税と株式譲渡課税が複雑に絡むため、税額計算を誤りやすい分野です。海外の税金が差し引かれている場合には、外国税額控除の適用漏れや二重課税を防ぐためにも、国際税務に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。


