ESPPって購入時に課税される?それって、給与所得・雑所得・譲渡所得のどれ?

結論

ESPP(Employee Stock Purchase Plan)で株式を時価より安く購入し、その購入時に課税される経済的利益は、原則として給与所得に該当します。これは、割引を受けられるのが従業員という立場に基づく利益であり、会社から受ける給与の一種と考えられるためです。一方、その後に株式を売却して得た値上がり益は譲渡所得等(上場株式等の譲渡所得等)として課税されます(所得税法第28条、第36条、第37条、所得税基本通達36-15、国税庁タックスアンサー「NO.2508 給与所得となるもの」)。

なぜ給与所得になるのでしょうか?

ESPPによる割引は、誰でも受けられる値引きではなく、会社で働く従業員だからこそ受けられる特典です。そのため、この割引分は労務提供の対価として会社から受けた経済的利益(現物給与)と考えられます。

例えば、毎月の給料のうち5,000円を株式購入に充てるよう設定していて、購入された株式が6,000円分であった場合、1,000円分の利益は会社から受けた給与と同様の性質を持つため、原則として給与所得になります。

給与は現金のみに限らず、株式の割引販売のような利益を経済的利益として含むケースがあります(所得税法第28条、第36条、所得税基本通達36-15、国税庁タックスアンサー「NO.2508 給与所得となるもの」)。

雑所得や譲渡所得にはならないのでしょうか?

購入時の利益については、通常は雑所得や譲渡所得には該当しません。

雑所得となるのは、会社との雇用関係とは別の立場で受けた報酬などであり、ESPPの割引とは性質が異なります。

また、譲渡所得となるのは、購入した株式を将来売却した時点です。

つまり、ESPPでは課税が二段階に分かれます。

  • 購入時の割引利益:給与所得
  • 売却時の値上がり益:譲渡所得等(上場株式等の譲渡所得等)

この二つを混同すると、取得価額を誤って計算し、二重課税や申告漏れにつながることがあります(所得税法第28条、第37条、租税特別措置法37条の10ほか)。

実務上の注意点

外資系企業のESPPにおいて、購入の際の経済的利益に対しては、日本の給与として源泉徴収されている場合は別として、多くの場合は、日本で給与所得として確定申告が必要になります。

また、売却の際の値上がり益に対しては、利益が生じていれば必ず確定申告が必要になりますが、購入時に給与所得として課税された金額は、将来売却する際の取得価額に反映されるため、購入時の時価や課税額を示す資料は必ず保管しておきましょう。

ESPPは「株式投資」と「給与課税」が組み合わさった制度であるため、一般的な株式投資とは税金の仕組みが大きく異なります。給与所得と譲渡所得等を正しく区別することが、適正な申告への第一歩です。

確定申告の内容に不安を感じておられる場合には、お早めの専門家への相談をお勧めいたします。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

平 剛史のアバター 平 剛史 大阪市中央区の税理士(元国税調査官)

近畿税理士会南支部所属。税理士登録番号第157314号。(https://www.zeirishikensaku.jp/NzBranchMembersListPerson/List/NDA%ef%bc%9d/MzA0)
国税局・税務署で20年以上にわたり、国際課税、所得税調査、法人税調査、調査審理など、幅広い税務実務に従事してきました。
国税局では、課税部全体を総括する部署や個人課税の運営を行う部署において国際税務専門官の事務運営に従事し、資料調査を専門とする部署において法人税特別調査に従事しました。
税務署では、国際税務専門官付き職員として国際課税に係る広域的な所得税調査に携わるほか、広域的な所得税の特別調査や広域的な調査審理にも従事しました。
現在は、これまでの経験を生かし、国際課税(RSU・ESPPを含む海外投資、海外取引)や税務調査対応を専門とする税理士業を営む傍ら、税金のことでお悩みを抱えている方のために微力ながら何かのお役に立ちたいという思いから、税法実務に関する解説などを発信しています。
詳しい経歴は「当事務所の代表税理士プロフィール」(https://t-cpta-office.com/)をご覧ください。

目次